264-110_兵主神社(丹波市春日町黒井)

比定社:兵主神社(丹波市春日町黒井)

式内社コード:264-110
神名帳社名 :兵主神社
社    格:小
所 在 地 :669-4141 兵庫県丹波市春日町黒井2956
Plus Code  :53HW+2F 丹波市、兵庫県
※Google Mapで上記の Plus code を検索すると所在地が表示されます。

アプローチ&ロケーション

ひょうずじんじゃと読む。
黒井集落の北の端の山裾に鎮座。
兵庫県道285号賀茂春日線に面しており、かつては氷上と春日を結ぶ街道筋だったようだ。
兵庫県道285号賀茂春日線に神社の入口があり100メートルほどの石畳の参道が続く。
周囲は人家と山林、東側に兵庫県立氷上高等学校、さらに東に最近脚光を浴びている黒井城址がある。
大きな社域で最奥に磐座と水神(龍神)が鎮座する。
駐車場は兵庫県立氷上高等学校の正門前から入ったところにあり4-5台ほど駐車可能。

訪問しやすさ指数

管理人の独断による訪問しやすさの点数を付けてみました。
管理人の独断による4つの観点、秘境度・交通の至便さ・徒歩でのアプローチ状況・探索の必要性、を点数化しました。
各点数が低ければ容易、高ければ難易度が高くなります。
式内社訪問の際の参考にしていただければ幸いです。

【秘境2】社域がどのような所なのか
5:秘境度MAX、深山幽谷で野生動物に注意レベル
4:秘境度はかなりのモノ、近くに人間がいないレベル
3:かなり自然の中の神社、時々人を見るレベル
2:近くに集落があり、子供が遊んでいるレベル
1:都会の神社、誰もがフラッと入れるレベル

【交通2】交通機関の状況
5:クルマのみ、4WD車等の特殊なクルマでしか行けない険しい場所
4:クルマのみ、普通のクルマで大丈夫だが林道等の条件の厳しい道路
3:クルマのみ、普通のクルマで普通に行ける
2:電車・バス等の公共交通機関はあるが制約が多くクルマのほうがベター
1:電車・バス等の公共交通機関で容易に行ける

【徒歩1】徒歩区間の長さと難易度
5:片道30分以上歩く、坂がきつい、やぶこき必要レベル
4:歩きは20分以内、がっつりトレッキング、危険箇所あり
3:歩きは15分以内、坂や石段があって軽くトレッキング、所によっては滑りやすいとかあり
2:歩きは10分以内、トレッキング要素ありだが容易
1:歩きは5分以内、容易

【探索2】発見難易度
5:何回も訪問しないと分からないレベル
4:周辺をかなり歩き回らないと分からないレベル
3:少々見つけにくいが見つけることができるレベル
2:目印があって比較的容易に見つけることができるレベル
1:目立つのですぐ見つかるレベル

ハイライト

巨木が多く非常に雰囲気が良く広い社域。
本殿後方の磐座。

写真

兵主神社の入口を正面から望む。一の鳥居からは石畳の参道が100メートルほど続く。前の道は兵庫県道285号賀茂春日線でかつては氷上と春日を結ぶ街道筋だったようだ。
兵主神社の入口を正面から望む。一の鳥居からは石畳の参道が100メートルほど続く。前の道は兵庫県道285号賀茂春日線でかつては氷上と春日を結ぶ街道筋だったようだ。
社標には延喜式内、縣社とある。
社標には延喜式内、縣社とある。
環境省・兵庫県謹製の社叢の説明書き。社叢は巨木が多く兵庫県指定環境緑地保全区域となっている。
環境省・兵庫県謹製の社叢の説明書き。社叢は巨木が多く兵庫県指定環境緑地保全区域となっている。
一の鳥居を望む。石畳の参道が100メートルほど続く。右に見えるのは兵庫県立氷上高等学校。
一の鳥居を望む。石畳の参道が100メートルほど続く。右に見えるのは兵庫県立氷上高等学校。
一の鳥居をくぐり参道を進むと二の鳥居。両部鳥居になっており左右の巨木が素晴らしい。
一の鳥居をくぐり参道を進むと二の鳥居。両部鳥居になっており左右の巨木が素晴らしい。
神社謹製の由緒書。御祭神は大名持大神(大国主大神)、少名持大神、天香山大神、恵比寿大神。聖武天平十八年(七四六年)に兵庫の守護神として鎮祭されたとある。
神社謹製の由緒書。御祭神は大名持大神(大国主大神)、少名持大神、天香山大神、恵比寿大神。聖武天平十八年(七四六年)に兵庫の守護神として鎮祭されたとある。
神社謹製の境内案内図。周りの社叢を含み大きな社域となっている。
神社謹製の境内案内図。周りの社叢を含み大きな社域となっている。
手水舎。
手水舎。
二の鳥居をくぐると参道が続く。右手には摂社末社、左手には社務所がある。
二の鳥居をくぐると参道が続く。右手には摂社末社、左手には社務所がある。
社務所。
社務所。
いたるところに巨木があり素晴らしい環境。
いたるところに巨木があり素晴らしい環境。
拝殿を正面より望む。
拝殿を正面より望む。
両脇の柱を抜けると広場があり正面に拝殿がある。
両脇の柱を抜けると広場があり正面に拝殿がある。
広場の右手には神輿を保管する建物がある。駐車場はこの建物の裏側にある。
広場の右手には神輿を保管する建物がある。駐車場はこの建物の裏側にある。
広場の左手には参集殿のような建物と台風で倒れた樹齢600年の杉の一部が保管されている建物があり大切にされている。
広場の左手には参集殿のような建物と台風で倒れた樹齢600年の杉の一部が保管されている建物があり大切にされている。
拝殿を正面よりの望む。拝殿自体は最近の建物のようだ。
拝殿を正面よりの望む。拝殿自体は最近の建物のようだ。
拝殿内部を望む。
拝殿内部を望む。
拝殿内部はきれいに保たれている。
拝殿内部はきれいに保たれている。
本殿を右側から望む。拝殿との間に幣殿があるようだ。巨木へ伸びているワイヤーロープは嵐が来ても木が倒れないようにするためのようだ。
本殿を右側から望む。拝殿との間に幣殿があるようだ。巨木へ伸びているワイヤーロープは嵐が来ても木が倒れないようにするためのようだ。
本殿を右側より望む。彫り物組物が施されているのが分かる。
本殿を右側より望む。彫り物組物が施されているのが分かる。
本殿を垣越しに望む。かなり大きく豪華な本殿。状態も良いみたいだ。
本殿を垣越しに望む。かなり大きく豪華な本殿。状態も良いみたいだ。
本殿を右側より望む。神紋は左三つ巴。
本殿を右側より望む。神紋は左三つ巴。
本殿を左側より望む。本殿は土塀で囲まれており近づけないのが残念。
本殿を左側より望む。本殿は土塀で囲まれており近づけないのが残念。
本殿の左奥に磐座への入口がある。社叢が濃い。
本殿の左奥に磐座への入口がある。社叢が濃い。
磐座の前に拝殿がしつらえてある。
磐座の前に拝殿がしつらえてある。
磐座を右側より望む。一部しか地表に出ていないと思われ、木が共生している。
磐座を右側より望む。一部しか地表に出ていないと思われ、木が共生している。
磐座を左側から望む。苔むして非常に良い雰囲気。
磐座を左側から望む。苔むして非常に良い雰囲気。
拝殿より二の鳥居を望む。参道は二の鳥居より少し右へ曲がっている。
拝殿より二の鳥居を望む。参道は二の鳥居より少し右へ曲がっている。
参集殿のような建物内部に奉納された様々なものが展示されている。
参集殿のような建物内部に奉納された様々なものが展示されている。

感想

近畿自然歩道 環境省・兵庫県謹製の説明書によると

兵主神社(ひょうずじんじゃ)
由緒(ゆいしょ)ある延喜式(えんぎしき)内神社で、祈願(きがん)すると疱瘡(ほうそう)がなおるといわれ、公家や貴族もお参りしたと言われています。周囲の社叢(しゃそう)には多くの巨木があり、中低木や草木を始め高木(こうぼく)にまつわるツル植物など豊富な植生(しょくせい)を保っています。社叢全体が兵庫県の環境緑地保全区域となっている貴重な鎮守(ちんじゅ)の森です。社殿(しゃでん)に向かって右裏手にある「オガタマノキ」は、樹齢300年の巨木で町指定の天然記念物です。
近畿自然歩道 環境省・兵庫県

とある。

神社謹製の由緒書によると

御祭神
 大名持大神(大国主大神)
 少名持大神
 天香山大神
 恵比寿大神
兵主神社は聖武天平十八年(七四六年)に兵庫の守護神として鎮祭され、延喜式内社として御祭神大名持大神(大国主大神)は少名持大神とともに病気平癒の守神医薬の神として健康長寿を守ってくださり、また金刀比羅大神として車の守護、交通安全の守神であり、恵比寿大神と共に商売繁盛福徳開運の神であります。
往古より公家・武家・丹波・但馬・播磨等をはじめ各地の崇敬厚く、特に戦国時代からは疱瘡の守護神として、主上御疱瘡の時または皇子御誕生の際には内侍曲より御代参があり、また近衛関白家は代々崇敬厚く、種々の献上物が今に神社宝物として保存されております。

とある

丹波市教育委員会謹製の兵主神社社叢説明書によると

市指定文化財 兵主神社社叢(ひょうずじんじゃしゃそう)
指定年月日 昭和44年8月31日
所 有 者 兵主神社
 社殿をめぐる森は巨木が多く、この地域ではめずらしく樹種が多い。また中木や樹下の草木の種類も豊富で、樹木にまつわる蔓性(つるせい)植物がよく育ち、伐採を戒めて護りつづけられた貴重な鎮守の森である。巨木のうち最大のものはムクノキ(目通り幹囲6.4m・高さ37m)で、スギ・ケヤキの幹囲5m近いものや、最大は幹囲4mをこえるカヤも多く、その他クス・ツガの巨木も多い。
 これらのうち社殿の背後にあるオガタマノキは、分布城めずらしい喬木で高さ30mに近く、樹勢(樹勢)は旺盛である。日本西南の暖地に自生するが県下ではこの木のほかに自生は知られていない。オガタマはオキタマ=神霊(しんれい)を招く意で、サカキの真物がこの木という説もある。
 また、社叢の下草の中に、新嘗祭(にいなめさい)に用いる”おみごろも”に摺染(すりぞめ)するヤマアイが多いのもオガタマノキと共に興味深い。中小木にはシロダモ・カゴノキ・ムラサキシキブ・ヒサカキ等種類が多く、下草にはエビネランなどや蔓性(つるせい)植物も多数あり、湿地には陸貝類も育って、小さい自然林そのままの姿がみられ、安定した社叢である。面積は約12ヘクタールにも及んでいる。
平成23年3月
丹波市教育委員会

とある。

神社謹製のご神木説明書によると

兵主神社本殿後方、奥の宮入口に空高くそびえて建つ杉の御神木は平成五年九月四日十三郷台風に根こそぎ倒木いたしました。
「樹は高く根は深く」のこの御神木は樹令六百五十余年、全長六十七M、根回り八.四Mあります。一本一本の音をまごころをこめて磨き上げ、立派な御神霊として御神威赫灼、長寿幸福を御守護の事と存じまず。
平成六年八月吉日建立
兵主神社

とある。

「延喜式神社の調査」によると以下のデータが残る(追加修正あり)。
ご祭神は、大己貴大神・少名彦大神・天香山神・(合祀)惠比須大神。
天平18年(746年)兵庫の守護神として鎮祭。
天正7年(1579年)保月城(黒井城)落城の際に兵火で焼失(修正)。
慶長10年(1605年)近衛信伊參籠。
寛永15年(1638年)造営(追加)。
明暦2年(1656年)造営。
享保14年(1729年)造営。
文化11年(1814年)近衛基前扁額を寄進。
明治45年(1912年)造営(追加)。
大正6年(1917年)縣社(追加)。
境内地の西に接して前方後円墳の稻塚と陪塚が築造されている。
社殿の後方にあたる森林中に「影向石」とよばれる周囲25m、高さ3.6mの半球状巨石があり、そこにはかつて大欅樹があつて巨根が巨石をとりまいていた。
大正14年4月には兵庫県史蹟名勝天然記念物の指定をうけたが、今は朽腐して面影はない。
とある。

兵主神社の成り立ちと言うと、兵器庫(兵庫とも)に兵主神を祀ったという内容が一般的。
兵庫とは、「ひょうご」「へいこ」「つわものぐら」と読むようだ。
文字通り、兵器を格納しておく倉や倉庫、つまり兵器庫のこと。

兵器庫が必要だということは、そのあたりが紛争中あるいは紛争が起きるかもしれない地域なのだろう。
有事の際に素早く対応しようと思えば、現場に近い場所に兵士と兵器を用意すると思う。
そこで、延喜式神名帳に出てくる「兵主神社」を抜き出してみると次のような結果になった。

大和国・城上郡・018-030・穴師坐兵主神社 ・名神大月次新嘗_相嘗
大和国・城上郡・018-230・穴師大兵主神社 ・小
和泉国・和泉郡・037-050・兵主神社    ・小
三河国・賀茂郡・076-030・兵主神社    ・小
近江国・野洲郡・152-040・兵主神社    ・名神大
近江国・伊香郡・159-170・兵主神社    ・小
丹波国・氷上郡・264-110・兵主神社    ・小
但馬国・朝来郡・272-040・兵主神社    ・小
但馬国・養父郡・273-090・兵主神社    ・小
但馬国・養父郡・273-230・更杵村大兵主神社・小
但馬国・出石郡・274-130・大生部兵主神社 ・小
但馬国・気多郡・275-070・久刀寸兵主神社 ・小
但馬国・城崎郡・276-110・兵主神社    ・小
但馬国・城崎郡・276-130・兵主神社二座  ・小
因幡国・巨濃郡・280-050・佐弥乃兵主神社 ・小
因幡国・巨濃郡・280-070・許野乃兵主神社 ・小
播磨国・飾磨郡・310-010・射楯兵主神社二座・小
播磨国・多可郡・317-020・兵主神社    ・小
壱岐島・壱伎郡・422-050・兵主神社    ・名神大

氷上郡では唯一の兵主神社となっている。
ちなみに現在の兵庫県という名前はこの「兵庫(つわものぐら)」を由来としているそうだ。

当社はそもそもの兵主神社のきな臭い成り立ちとは遠いように感じた(個人的見解です)。
天正7年(1579年)保月城(黒井城)落城の際の兵火で、それ以前の資料が残っていないことが原因かもしれない。

江戸時代以前、疱瘡は非常に大きな心配事だったようで、疱瘡に関する奉納物(石灯籠等)を時々見かける。
交通やこうした病気に関する感覚は、現代と大きく異なると感じた。

社域は、古木が多く、古くより当地に鎮座していることが分かる。
特に、本殿奥の磐座のあたりは非常に大事にされ保存されてきた様子だ。
元々はこの磐座を中心に信仰されていたのだろうと思う。

社殿は、明治45年(1912年)に造営とある、見た感じも非常に新しく立派な印象だ。
社殿は新しいと重厚な雰囲気が伝わってこないことが多いが、当社は素晴らしい雰囲気を持っている。

非常に良く手入れされている社域は気持ちの良いもの。
素晴らしい社叢は兵庫県指定環境緑地保全区域となっている。

注意点

特になし。

訪問ノート

訪問日 :2018/10/14、2021/9/20
交通手段:クルマで訪問
カメラ :RX100、α7M3 + FE16-35mm F2.8 GM