276-130_兵主神社(豊岡市山本)

比定社:兵主神社(豊岡市山本)

式内社コード:276-130
神名帳社名 :兵主神社 二座
社    格:小
所 在 地 :668-0807 兵庫県豊岡市山本100-1
Plus Code  :HR4G+HG 豊岡市、兵庫県
※Google Mapで上記の Plus code を検索すると所在地が表示されます。

アプローチ&ロケーション

「ひょうずじんじゃ」と読む、地名の山本は「やまもと」と読む。
山本集落の東端の愛宕山の中腹に鎮座。
国道178号線の豊岡大橋東交差点を南へ兵庫県道548号楽々浦玄武洞豊岡線に入る。
そのまま300メートルほど行くと京都丹後鉄道宮豊線のガードがありその手前東側に神社への入口がある。
神社入口が目立たないので見つけにくい。
駐車場は無いので注意。

訪問しやすさ指数

管理人の独断による訪問しやすさの点数を付けてみました。
管理人の独断による4つの観点、秘境度・交通の至便さ・徒歩でのアプローチ状況・探索の必要性、を点数化しました。
各点数が低ければ容易、高ければ難易度が高くなります。
式内社訪問の際の参考にしていただければ幸いです。

【秘境2】社域がどのような所なのか
5:秘境度MAX、深山幽谷で野生動物に注意レベル
4:秘境度はかなりのモノ、近くに人間がいないレベル
3:かなり自然の中の神社、時々人を見るレベル
2:近くに集落があり、子供が遊んでいるレベル
1:都会の神社、誰もがフラッと入れるレベル

【交通2】交通機関の状況
5:クルマのみ、4WD車等の特殊なクルマでしか行けない険しい場所
4:クルマのみ、普通のクルマで大丈夫だが林道等の条件の厳しい道路
3:クルマのみ、普通のクルマで普通に行ける
2:電車・バス等の公共交通機関はあるが制約が多くクルマのほうがベター
1:電車・バス等の公共交通機関で容易に行ける

【徒歩2】徒歩区間の長さと難易度
5:片道30分以上歩く、坂がきつい、やぶこき必要レベル
4:歩きは20分以内、がっつりトレッキング、危険箇所あり
3:歩きは15分以内、坂や石段があって軽くトレッキング、所によっては滑りやすいとかあり
2:歩きは10分以内、トレッキング要素ありだが容易
1:歩きは5分以内、容易

【探索4】発見難易度
5:何回も訪問しないと分からないレベル
4:周辺をかなり歩き回らないと分からないレベル
3:少々見つけにくいが見つけることができるレベル
2:目印があって比較的容易に見つけることができるレベル
1:目立つのですぐ見つかるレベル

ハイライト

本殿の素晴らしい彫り物。

写真

兵主神社(豊岡市山本)の入り口を望む。鳥居は無く石段のみがある、社標もあるが木々に隠れてぱっと見は見えない。見つけにくく何度も前を通ったが見逃してしまった。背後の山は愛宕山、中世の山城の鶴城址がある。
兵主神社(豊岡市山本)の入り口を望む。鳥居は無く石段のみがある、社標もあるが木々に隠れてぱっと見は見えない。見つけにくく何度も前を通ったが見逃してしまった。背後の山は愛宕山、中世の山城の鶴城址がある。
右側(南)を望む。すぐ横には京都丹後鉄道宮豊線が走っていて、鉄道を作る時に削られたのではないだろうか。
右側(南)を望む。すぐ横には京都丹後鉄道宮豊線が走っていて、鉄道を作る時に削られたのではないだろうか。
左側(北)を望む。この道は兵庫県道548号楽々浦玄武洞豊岡線、この先に国道178号線が走っている。周囲は住宅地。駐車場は無いので周辺の道に駐車するしかない。
左側(北)を望む。この道は兵庫県道548号楽々浦玄武洞豊岡線、この先に国道178号線が走っている。周囲は住宅地。駐車場は無いので周辺の道に駐車するしかない。
石段脇の社標には延喜式内宮とある。珍しい表現だ。
石段脇の社標には延喜式内宮とある。珍しい表現だ。
雰囲気の良い社叢の中の石段を登る。
雰囲気の良い社叢の中の石段を登る。
石段の途中にある石灯籠は火袋が失われているが文政6年(1823年)とある。
石段をしばらく登ると手水舎が見えてくる。手水舎には貴布祢神社と書いてある。
石段をしばらく登ると手水舎が見えてくる。手水舎には貴布祢神社と書いてある。
手水舎。
手水舎。
石段を登りきると行き止まり。
石段を登りきると行き止まり。
左側に鳥居がある、鳥居と社殿は南を向いている。鳥居の扁額には貴布祢神社とある。
左側に鳥居がある、鳥居と社殿は南を向いている。鳥居の扁額には貴布祢神社とある。
鳥居をくぐってすぐ左には稲荷神社。手水舎がチラッと見える。
鳥居をくぐってすぐ左には稲荷神社。手水舎がチラッと見える。
参道は苔むしてフワフワ、奥に社殿が見える。左手には社務所のような建物がある。
参道は苔むしてフワフワ、奥に社殿が見える。左手には社務所のような建物がある。
拝殿を正面より望む。扁額には兵主神社・貴布禰大明神の扁額がかかっている。推測するに兵主神社に貴布祢神社がいつの時代か不明だが合祀し現在の形になっているようだ。当神社の名称は貴布祢神社で通っているようだ。
拝殿を正面より望む。扁額には兵主神社・貴布禰大明神の扁額がかかっている。推測するに兵主神社に貴布祢神社がいつの時代か不明だが合祀し現在の形になっているようだ。当神社の名称は貴布祢神社で通っているようだ。
拝殿と覆屋に入った本殿を右側より望む。最近補修されて部分的に新しくなっている。
拝殿と覆屋に入った本殿を右側より望む。最近補修されて部分的に新しくなっている。
覆屋に入った本殿を右側より望む。本殿は明和2年(1765年)の建築だと思われるが非常に良い状態。作者は伝わっていないが光背部分の彫り物が素晴らしい。
覆屋に入った本殿を右側より望む。本殿は明和2年(1765年)の建築だと思われるが非常に良い状態。作者は伝わっていないが光背部分の彫り物が素晴らしい。
光背部分の右側からのアップ。龍が飛び出している。
光背部分の右側からのアップ。龍が飛び出している。
光背部分の左側からのアップ。これだけ立体的でグネグネした龍は初めて見た。顔の分だけ飛び出している、一見の価値あり。
光背部分の左側からのアップ。これだけ立体的でグネグネした龍は初めて見た。顔の分だけ飛び出している、一見の価値あり。
本殿左側より覆屋に入った本殿と拝殿を望む。
本殿左側より覆屋に入った本殿と拝殿を望む。
本殿より拝殿越しに鳥居を望む。
本殿より拝殿越しに鳥居を望む。
苔もある。
苔もある。
拝殿より鳥居を望む。かつてはこの先まっすぐ参道があったのではないだろうか。
拝殿より鳥居を望む。かつてはこの先まっすぐ参道があったのではないだろうか。
鳥居前より石段方向を望む。
鳥居前より石段方向を望む。
上から石段を望む。石段はそれほど長くないのでご安心を。
上から石段を望む。石段はそれほど長くないのでご安心を。

感想

由緒書はないので詳細不明。


「延喜式神社の調査」によると以下のデータが残る(追加修正あり)。

ご祭神は、速須佐男神・(合祀)高淤伽美神。
 また次の説もあるようだ。
  速須佐男命・大己貴命・貴布禰大明神『宮司高階幸男氏』。

天平18年(746年)佐伯直岸磨の創立。
明和2年(1765年)造営。
明治6年(1873年)村社。

江戸時代までは「兵主貴布禰神社」・「貴船神社」と呼ばれていた。

天平18年(746年)12月佐伯直岸磨の創立せし社にして延喜式の制小社に列し、明和2年(1765年)本殿を再建す明治6年(1873年)村社に列せらる。(兵庫県神社誌)

とある。


兵庫県神社庁によると

主祭神:速須佐男命(スサノオノミコト)。
配祀神:高於加美神(タカオカミノカミ)。

天平18年(746)佐伯直岸麿によって創祀されたと伝えられている。

とある。


兵主神社(豊岡市山本)のある当地は、円山川に面し街道も集まり交通の要衝や政治経済の中心として賑やかだったことが想像できる。
豊岡という場所は思っている以上に標高が低い、兵主神社(豊岡市山本)の参道入口も3.2メートルほど、社殿のある場所で19.4メートルほどとなっている。
かつての円山川は現在より水位が高かったと思われ、兵主神社(豊岡市山本)のすぐ前まで水が入っており舟で参拝していたのではないだろうか(個人的見解です)。
やはり当地も早くより開けた地域のようで、周囲には下記の古墳や中世城跡が点在する地域。
金原石室古墳・帯雲寺南古墳・粟谷古墳。
背後の愛宕山には南北朝から戦国期にかけて勢力を持ち山名四天王のひとりと呼ばれた田結庄氏の鶴城址がある。

ご祭神は、速須佐男神・(合祀)高淤伽美神。
ご祭神が速須佐男神というのは兵主神社らしい。
江戸時代までは「兵主貴布禰神社」・「貴船神社」と呼ばれていたところを見ると、貴布禰はきぶねと発音するのだろう。
神社名からすると合祀神として高淤伽美神が祀られているのも自然な感じだが、いつの時代に合祀されたのか記録がない。
式内社である神名帳社名の兵主神社二座とあるのは詳細不明だ。

江戸時代までは「兵主貴布禰神社」・「貴船神社」と呼ばれていたところを見ると、貴布禰はきぶねと発音するのだろう。
そう考えると合祀神として高淤伽美神が祀られているのも自然な感じだが、いつの時代に合祀されてのか記録がない。

兵主神社というのは、兵庫を置いて兵主神(大巳貴命や素戔嗚命)を祀ったという神社。
兵庫とは、「ひょうご」「へいこ」「つわものぐら」と読むようだ。
文字通り、兵器を格納しておく倉や倉庫、つまり兵器庫のこと。

兵器庫が必要だということは、そのあたりが紛争中あるいは紛争が起きるかもしれない地域なのだろう。
有事の際に素早く対応しようと思えば、現場に近い場所に兵士と兵器を用意すると思う。
そこで、延喜式神名帳に出てくる「兵主神社」を抜き出してみると次のような結果になった。
大和国・城上郡・018-030・穴師坐兵主神社 ・名神大月次新嘗_相嘗
大和国・城上郡・018-230・穴師大兵主神社 ・小
和泉国・和泉郡・037-050・兵主神社    ・小
三河国・賀茂郡・076-030・兵主神社    ・小
近江国・野洲郡・152-040・兵主神社    ・名神大
近江国・伊香郡・159-170・兵主神社    ・小
丹波国・氷上郡・264-110・兵主神社    ・小
但馬国・朝来郡・272-040・兵主神社    ・小
但馬国・養父郡・273-090・兵主神社    ・小
但馬国・養父郡・273-230・更杵村大兵主神社・小
但馬国・出石郡・274-130・大生部兵主神社 ・小
但馬国・気多郡・275-070・久刀寸兵主神社 ・小
但馬国・城崎郡・276-110・兵主神社    ・小
但馬国・城崎郡・276-130・兵主神社二座  ・小
因幡国・巨濃郡・280-050・佐弥乃兵主神社 ・小
因幡国・巨濃郡・280-070・許野乃兵主神社 ・小
播磨国・飾磨郡・310-010・射楯兵主神社二座・小
播磨国・多可郡・317-020・兵主神社    ・小
壱岐島・壱伎郡・422-050・兵主神社    ・名神大

これを見ると但馬国は他の国に対して突出して多いことが分かる。
他の国は多くても2つ、但馬国は7つもある、さらに城崎郡には2社・3座もあり、養父郡と並んで城崎郡は当時のホットスポットだったのだろう。
但馬国が緊張状態にあったのだと推測できる(個人的見解です)。
ちなみに現在の兵庫県という名前はこの「兵庫(つわものぐら)」を由来としているそうだ。

式内社の兵主神社の分布をプロットしたもの。三河国・近江国の各1ヶ所づつは場所が特定できずプロット無し。壱岐島も除外した。紛争地域!?は兵庫県北部に集中している。
式内社の兵主神社の分布をプロットしたもの。三河国・近江国の各1ヶ所づつは場所が特定できずプロット無し。壱岐島も除外した。紛争地域!?は兵庫県北部に集中している。
同じく式内社の兵主神社の分布をプロットしたものの但馬国のアップ。ほぼ円山川沿いの朝来から豊岡あたりに集中している。大和朝廷へ最後まで従わない氏族や地域があったのだろうか。
個人的に、兵主神社というのはなかなか実像が非常に掴みにくい神社ではある。

兵主神社(豊岡市山本)へのアプローチは場所は分かっているが行き方が分からないパターン。
大体このあたりにあるということが分かっていても現地でなかなか発見できず何度も前を通り過ぎていた。
国道178号線の豊岡大橋東交差点を南へ兵庫県道548号楽々浦玄武洞豊岡線に入る。
そのまま300メートルほど行くと京都丹後鉄道宮豊線のガードがあり東側にこんもりとした山がある。
ガードのすぐ手前20メートルほどだろうか山に上る階段があり、ここが兵主神社(豊岡市山本)の入り口で社標もあるが道路からは見えにくい。
駐車場は無いので周囲の道路に駐車させていただいた。

兵主神社(豊岡市山本)への入り口は石段となっていて延喜式内宮と彫られた社標があるのみ。
石段を登ると感じの良い社叢が広がる。
しばらく登ると手水舎が見えてくる、手水舎には貴布祢神社と書いてある。
突き当りまで進むと左に鳥居があり貴布禰神社と書かれた扁額が掲げられている。
京都丹後鉄道宮豊線が建設された際に参道が付け替えられたのだろうと思う(個人的見解です)。
本来は社殿・鳥居も南向きで南側に参道があったのだろうと思う。

鳥居をくぐると苔むした参道の向こうに社殿が見えていて良い雰囲気。
明和3年(1766年)と彫られた石灯籠もあり古くよりここに鎮座していることが分かる。
左手には集会所のような建物がある。
拝殿はあまり見ない形式で縦に細長い、拝殿と回廊が合体したような形。
拝殿に掛かる扁額には兵主神社・貴布禰大明神とある。
拝殿の奥には覆屋に入った本殿がある、覆屋は屋根部分のみで鉄骨の柱のみで本殿がよく見える。
本殿には彫り物が施されていて素晴らしい造形、龍が前へ迫り出していて迫力満点、一見の価値がある。
ここまで前へ迫り出している彫り物は珍しい。
本殿・覆屋・拝殿ともに最近補修がなされたようだ、部分的に新しくなっている。
本殿は明和2年(1765年)の建築だと思われるが非常に状態が良く大事にされている様子が分かる。

兵主神を祀るがいつの時代にか水の神さまも祀るようになった神社。

注意点

駐車場は無いので注意。

訪問ノート

訪問日 :2021/7/3
交通手段:クルマで訪問
カメラ :α7M3 + FE16-35mm F2.8 GM

各種式内社データへのリンク

御祭神等の詳細データは以下をご参照ください。

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