318-070_住吉神社(加東市上鴨川)

318-070_住吉神社(加東市上鴨川)

式内社コード:318-070
神名帳社名 :住吉神社
社    格:小
所 在 地 :673-1401 兵庫県加東市上鴨川571
Plus Code  :X385+MV 加東市、兵庫県
※Google Mapで上記の Plus codeを検索すると表示されます。

アプローチ&ロケーション

「すみよしじんじゃ」と読む、地名の加東市上鴨川は「かとうしかみかもがわ」と読む。
国道372号線「上鴨川」交差点を南に入り1100メートルほど南下したところ。
兵庫県道311号上鴨川木津線の南へ向かって左カーブの途中内側に神社入口がある。
社叢が茂っており見つけにくいが看板が出ている。
看板のあたりに駐車可能。

訪問しやすさ指数

管理人の独断による訪問しやすさの点数を付けてみました。
管理人の独断による4つの観点、秘境度・交通の至便さ・徒歩でのアプローチ状況・探索の必要性、を点数化しました。
各点数が低ければ容易、高ければ難易度が高くなります。
式内社訪問の際の参考にしていただければ幸いです。

【秘境3】社域がどのような所なのか
5:秘境度MAX、深山幽谷で野生動物に注意レベル
4:秘境度はかなりのモノ、近くに人間がいないレベル
3:かなり自然の中の神社、時々人を見るレベル
2:近くに集落があり、子供が遊んでいるレベル
1:都会の神社、誰もがフラッと入れるレベル

【交通3】交通機関の状況
5:クルマのみ、4WD車等の特殊なクルマでしか行けない険しい場所
4:クルマのみ、普通のクルマで大丈夫だが林道等の条件の厳しい道路
3:クルマのみ、普通のクルマで普通に行ける
2:電車・バス等の公共交通機関はあるが制約が多くクルマのほうがベター
1:電車・バス等の公共交通機関で容易に行ける

【徒歩1】徒歩区間の長さと難易度
5:片道30分以上歩く、坂がきつい、やぶこき必要レベル
4:歩きは20分以内、がっつりトレッキング、危険箇所あり
3:歩きは15分以内、坂や石段があって軽くトレッキング、所によっては滑りやすいとかあり
2:歩きは10分以内、トレッキング要素ありだが容易
1:歩きは5分以内、容易

【探索3】発見難易度
5:何回も訪問しないと分からないレベル
4:周辺をかなり歩き回らないと分からないレベル
3:少々見つけにくいが見つけることができるレベル
2:目印があって比較的容易に見つけることができるレベル
1:目立つのですぐ見つかるレベル

ハイライト

隠れ里のような地域性と貴重な神事。
国指定重要文化財(建造物)の本殿。

国指定重要文化財(建造物)

住吉神社本殿
時代:室町後期
年代:明応2
西暦:1493
構造及び形式等:三間社流造、檜皮葺
文化庁解説:
明応二年(一四九三)のもの。三間社流造で屋根等には改造があるが、その他はよくはじめの姿を残している。

重要無形民俗文化財

上鴨川住吉神社神事舞
文化庁解説:
住吉神社の祭りに行なわれ、宮座制のもとに伝承されてきた神事芸能で、中世の田楽、能舞などの遺風をよく伝えるものとして貴重である。
 まず、宵宮では、「太刀舞」「獅子」「田楽舞」「扇舞」「高足」などを演じ、続いて翌日の本祭には、これらの曲目の後に、「翁舞」として猿楽風な曲が舞い、語られる。特に「高足」「翁舞」などは芸能史上特色がいちじるしい。

記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財

上鴨川住吉神社の神事舞
文化庁解説:
住吉神社の祭りに行なわれ、宮座制のもとに伝承されてきた神事芸能で、中世の田楽、能舞などの遺風をよく伝えるものとして貴重である。
 まず、宵宮では、「太刀舞」「獅子」「田楽舞」「扇舞」「高足」などを演じ、続いて翌日の本祭には、これらの曲目の後に、「翁舞」として猿楽風な曲が舞い、語られる。特に「高足」「翁舞」などは芸能史上特色がいちじるしい。

写真

住吉神社(加東市上鴨川)の正面は社叢に覆われていてここに神社があるとは分かりにくい。看板を目印にするのが良い。
住吉神社(加東市上鴨川)の正面は社叢に覆われていてここに神社があるとは分かりにくい。看板を目印にするのが良い。
右側(南)を望む。国道372号線「上鴨川」交差点を南に入りしばらく兵庫県道311号上鴨川木津線を走るとカーブの途中にある。この先には下鴨川の集落がある。
右側(南)を望む。国道372号線「上鴨川」交差点を南に入りしばらく兵庫県道311号上鴨川木津線を走るとカーブの途中にある。この先には下鴨川の集落がある。
左側(北)を望む。こちらは国道372号線「上鴨川」交差点方面。よく見ると橋がかかっていて鴨川が流れている。
左側(北)を望む。こちらは国道372号線「上鴨川」交差点方面。よく見ると橋がかかっていて鴨川が流れている。
看板の場所から石段をを登る。小高い丘の上に鎮座していることが分かる。
看板の場所から石段をを登る。小高い丘の上に鎮座していることが分かる。
石段を登りきると社殿のある場所に出る。石灯籠の間から見える茅葺きの建物が印象的。
石段を登りきると社殿のある場所に出る。石灯籠の間から見える茅葺きの建物が印象的。
茅葺きの建物は舞台となっており拝殿・本殿の方向を向いているのでこちらは裏側ということになる。
茅葺きの建物は舞台となっており拝殿・本殿の方向を向いているのでこちらは裏側ということになる。
加東市・加東市教育委員会謹製の説明書き。正和5年(1316)の棟木が残り現在の本殿は明応2(1493年)に建築されたものとある。本殿は国指定重要文化財(建造物)。
加東市・加東市教育委員会謹製の説明書き。正和5年(1316)の棟木が残り現在の本殿は明応2(1493年)に建築されたものとある。本殿は国指定重要文化財(建造物)。
加東市謹製の説明書き。
加東市謹製の説明書き。
舞台の左脇から拝殿前の広場を望む。訪ねた時は拝殿の茅葺きの改修中だった。配置は拝殿と本殿は西向き、広場の右手には参集殿のような長細い建物、拝殿と向かい合うように舞台が配置されている。
舞台の左脇から拝殿前の広場を望む。訪ねた時は拝殿の茅葺きの改修中だった。配置は拝殿と本殿は西向き、広場の右手には参集殿のような長細い建物、拝殿と向かい合うように舞台が配置されている。
拝殿前広場の右手にある参集殿のような建物。
拝殿前広場の右手にある参集殿のような建物。
拝殿前広場より拝殿を望む。拝殿前には鳥居、そしてY字型の柱が建っている。柱は黒く焦げていて神事に使われるということだ。他では見ない珍しいもの。
拝殿前広場より拝殿を望む。拝殿前には鳥居、そしてY字型の柱が建っている。柱は黒く焦げていて神事に使われるということだ。他では見ない珍しいもの。
参集殿のような建物から拝殿を望む。拝殿は左右に振り分けられた割拝殿の形式、広場からは一段高くなっている。
参集殿のような建物から拝殿を望む。拝殿は左右に振り分けられた割拝殿の形式、広場からは一段高くなっている。
手水舎。ダイナミックな巨石の手水鉢。
手水舎。ダイナミックな巨石の手水鉢。
柱の後方鳥居の前から拝殿を望む。足場があるので分かりにくいが左右に分かれている形式。素朴な建物だ。
柱の後方鳥居の前から拝殿を望む。足場があるので分かりにくいが左右に分かれている形式。素朴な建物だ。
工事中だったので拝殿から本殿を撮ることができなかったので右側より本殿を望む。国指定重要文化財(建造物)の本殿、朱色が鮮やかで状態が良いようだ、明応2(1493年)の建物で昭和45年(1970年)に解体修理の記録が残る。
工事中だったので拝殿から本殿を撮ることができなかったので右側より本殿を望む。国指定重要文化財(建造物)の本殿、朱色が鮮やかで状態が良いようだ、明応2(1493年)の建物で昭和45年(1970年)に解体修理の記録が残る。
本殿右側の摂社末社。
本殿右側の摂社末社。
本殿左側の摂社末社。
本殿左側の摂社末社。
本殿を左側より望む。周囲は豊かな社叢となっていて大切に守られてきたことが感じられる。
本殿を左側より望む。周囲は豊かな社叢となっていて大切に守られてきたことが感じられる。
本殿を左側よりさらに離れて望む。置いてあるのは取り外した拝殿の千木だろうか。
本殿を左側よりさらに離れて望む。置いてあるのは取り外した拝殿の千木だろうか。
左側より拝殿前の広場を望む。
左側より拝殿前の広場を望む。
舞台に改修の材料が置いてあった。真新しい拝殿の千木。
舞台に改修の材料が置いてあった。真新しい拝殿の千木。
参集殿には葺き替えのための茅が置いてあった。
参集殿には葺き替えのための茅が置いてあった。

感想


加東市・加東市教育委員会謹製の説明書きによると

国指定 重要文化財 住吉神社本殿
 (加東市上鴨川 住吉神社 昭和35年6月9日指定 三間社流造 檜皮葺)
  棟木墨銘によると、正和5年(1316)に創建、永享6年(1434)に再建、ついで明応2年(1493)に
 再々建したことがわかる。また、内陣小脇板裏面と天井梁下端にも明応2年の墨書があって、現
 本殿はこのときのものであることがあきらかである。以後、貞享3年(1686)に向拝部の修理がおこ
 なわれた。外観は普通にみる三間社流造であるが、床下の転用古材などからみて、創建当時は
 四間社であったと考えられる。手狭、木鼻、繁虹梁などの形態と渦文、勾欄親柱の形式などには
 時代と地方の特徴を示すものがあり、貴重な遺構である。
国指定 重要無形民族文化財 住吉神社神事舞
 (加東市上鴨川 住吉神社神事舞保存会 昭和52年5月17日指定)
  上鴨川住吉神社神事舞は、毎年10月第一土・日曜日両日にわたって、宮座が奉納する古式ゆかしい祭儀である。この
 神事舞は、御神楽、太刀舞、獅子、田楽の舞、扇の舞、高足と、いど、万歳楽、宝もの、翁、冠者、父の尉があ
る。「翁」を中心とした中世神事能の姿をはじめ、田楽能、猿楽能の成立過程を究明するのに貴重な資料である。
 これらは鎌倉期から伝わるといわれるが、その発祥はあきらかでない。なおここには、厳格に守られてきた宮座制度
 があって、中世以来の郷村組織をみることができるのも貴重である。
県指定文化財 神事能面
 (加東市上鴨川 住吉神社神事保存会 昭和43年3月29日指定)
  上鴨川住吉神社には能面が12面現存する。このうち黒色尉面、冠者面、翁面、王鼻面の五面は今でも神事舞に使われて
 いるが、のこりの冠者面、尉面、媼面、陵王面の七面はなににつかわれていたか不明である。

加東市・加東市教育委員会

とある。


加東市・加東市観光協会謹製の説明書きによると

住吉神社
国指定重要文化財
神事舞は国指定の重要無形民俗文化財で
毎年10月第一土・日曜日に催される

加東市・加東市観光協会

とある。


「延喜式神社の調査」によると以下のデータが残る(追加修正あり)。

ご祭神は、上筒之男命・中筒男命・底筒男命・息長足姫命。

創立年月不詳
正和5年(1316年)造営。
永享6年(1434年)造営。
明応2年(1493年)造営
寛文6年(1666年)氏子間に紛争が生じ各地区が住吉神社を建てて独立。
明治7年(1874年)2月村社。
昭和45年(1970年)本殿解体修理(追加)。

棟木銘によると本殿が正和5年(1316)に創建、その後永享6年(1434)に建て替えられた。昭和35年(1960)に国の重要文化財に指定され、室町時代中期建築物の特徴をよく今に伝えている。
厳格な宮座制度を脈々と守り続け、約700年間受け継がれてきた重要無形民俗文化財の「神事舞」が伝わる。

とある。


兵庫県神社庁によると

主祭神:表筒男命(ウワツツノオノミコト)
配祀神:中筒男命(ナカツツノオノミコト)・底筒男命(ソコツツノオノミコト)・気長足姫命(オキナガタラシヒメノミコト)

祭記事:
 10月4日(宵宮)5日(本宮)の両日、約700年の永きに渡り厳格な宮座制度に支えられ伝え続けられてきた神事舞を奉納する。
 かつて、宮座には24軒株があり左右両座に分れて交互に祭儀を務めた。現在では株制も両座制もなく氏子のどの家からも宮座に加われるが、しかしながらそれは長男に限られる。他から養子に来た者や、二男・三男は宮座に加わることは許されず、別のギオン座にて祭儀の末端的奉仕役を務める。女人も一切の関与を許されない。
 神事舞にはリョンサンの舞(太刀舞)・獅子舞・田楽の舞・扇の舞(入舞)・高足などがあり、五穀豊穣や無病息災を祈願する。古式をよく残
し芸能の成立を探る貴重な存在となっている。
 昭和52年5月17日
        国指定重要無形民俗文化財

由 緒:
 創立は不詳。上鴨川村を中心とする付近の総氏神としての位置を占めたが、江戸時代に氏子が分離し各村に住吉神社が創建された。以来、上鴨川村の氏神として今日に至る。
 厳格な宮座制度を脈々と守り続け、約700年間受け継がれてきた神事舞がある。
 本殿は昭和45年に解体修理され、朱緑の鮮やかな色彩が施された。外観は普通にみる三間社流造り桧皮葺であるが、床下転用古材などから創建当時は四間社であったと見られる。
 棟木墨書銘によると
 一番造営(創建)鎌倉時代正和5年(1316)
 二番造営(修理)室町時代永享6年(1434)
 三番造営(修理)室町時代明応2年(1493)
 本殿 昭和35年6月9日
           国指定重要文化財
 明治7年(1874)2月 村社に列せられた。

とある。


延喜式神名帳の播磨国・賀茂郡「住吉神社」の論社のうちの一つ。

住吉神社(加東市上鴨川)のある当地は、播磨国の東端に位置する。
東へ峠を越えれば摂津国、西には加古川が流れ、目前には鴨川が流れておりいくつかの谷筋が合流する地点に鎮座する。
摂津国と播磨国を結ぶ交通の要衝であったと想像される。
今でも上鴨川に対して少し南へ行くと下鴨川の地名が残り住吉神社(加東市上鴨川)が地域の中心的な役割を果たしてきたことが分かる。
古くより開けた地域のようで周囲には下鴨川・大カメ遺跡、下鴨川・スヘリコ遺跡、下鴨川・長畑遺跡、上鴨川・東谷遺跡、上鴨川・野尻遺跡、上鴨川・上条遺跡、上鴨川・中谷遺跡(兵庫県考古博物館資料による)がある。

住吉神社(加東市上鴨川)のご祭神は、表筒男命・中筒男命・底筒男命・息長足姫命。
海には面していないが住吉三神を祀る。
当社は住吉大神の宮九箇処ではないが、ちなみに住吉大神の宮九箇処は次のようになっている。
摂津国   :住吉大社
摂津国西成郡:坐摩社、041-010_坐摩神社のこと
摂津国菟原郡:社、神戸市東灘区の本住吉神社のこと
播磨国賀茂郡:住吉酒見社
長門国豊浦郡:住吉忌宮、下関市の354-010_住吉神社のこと
筑前国那珂郡:住吉社、福岡市博多区の394-020_住吉神社
紀伊国伊都郡:丹生川上天手力男意気続々流住吉大神、和歌山県伊都郡
大唐国一処 :住吉大神社、任那日本府の地
新羅国一処 :住吉荒魂、新羅国

住吉神社(加東市上鴨川)へのアプローチは比較的分かりやすい。
国道372号線「上鴨川」交差点を南に入り1100メートルほど南下したところ。
兵庫県道311号上鴨川木津線の南へ向かって左カーブの途中内側に神社入口がある。
社叢が茂っており見つけにくいが看板が出ており看板のあたりに駐車可能。

住吉神社(加東市上鴨川)の入口は社叢に隠れていて少々分かりにくい。
通りすがりであれば住吉神社(加東市上鴨川)があることすら気が付かないかもしれない。
「住吉神社」という加東市・加東市観光協会謹製の看板を目指していけば大丈夫だろう。
看板の奥に石段があるので登って行くと社殿のある広場に出る。
ここからはまるで古代にタイムワープしたかのような気持ちになる。
茅葺きの舞台が拝殿と本殿に向かって建てられている(舞台へは背後から近づくことになる)。
その先には一段上がってこれまた茅葺きの拝殿が建てられている。
この広場は社殿に向かって拝殿、その向こうに本殿があり、右手には参集殿のような建物、後方には舞台という配置となっている。
特筆すべきは鳥居の前に黒く焦げた柱が立っている、こうした柱が立っているのは珍しい。
この柱は神事に使用するようだ。
訪ねた時は拝殿の茅葺きを葺き替え作業中だったので部材や材料が置かれていてある意味興味深い。
拝殿は割拝殿の形式となっており、通り抜けるとすぐに朱色の鮮やかな本殿となる。
本殿は国指定重要文化財(建造物)となっており明応2(1493年)の建物、昭和45年(1970年)に解体修理が行われ非常に状態が良い。
社域は広くはないが全体的に独特の雰囲気がある、こうした神社は珍しい。
また祭に奉納される神事舞が伝えられていてこちらも国指定重要無形民俗文化財となっている。
こうした建物等はもちろんだが神事についても後世に長く残していきたいと感じた。

貴重な古き伝統を色濃く残す隠れ里にある神社。

注意点

特になし。

訪問ノート

訪問日 :2019/6/29
交通手段:クルマで訪問
カメラ :RX100M3